本記事は、あくまで執筆者の見解であり、インターシステムズの公式なドキュメントではありません。
IRISのoAuth2機能関連の情報発信は既に多数ありますが、本稿では
- 手順(ほぼ)ゼロでひとまず動作させてみる
- 設定の見通しを良くするために、役割ごとにサーバを分ける
- 目に見えない動作を確認する
- クライアント実装(PythonやAngular,CSPアプリケーション等)と合わせて理解する
- シングルサインオン/シングルログアウトを実現する
ということを主眼においています。
コミュニティ版で動作しますので、「とりあえず動かす」の手順に従って、どなたでもお試しいただけます。
現状、使用IRISバージョンはIRIS 2023.1のプレビュー版になっていますが、ソースコードは適宜変更します。
手順に沿ってコンテナを起動すると下記の環境が用意されます。この環境を使用して動作を確認します。
ユーザエージェント(ブラウザ)やPython/curlからのアクセスは、全てApache (https://webgw.localdomain/) 経由になります。青枠の中のirisclient等の文字はコンテナ名(ホスト名)です。
例えば、irisclientホストの/csp/user/MyApp.Login.clsにアクセスする場合、URLとして
https://webgw.localdomain/irisclient/csp/user/MyApp.Login.cls
と指定します。
つまり、各エンドポイントは同一のorigin (https://webgw.localdomain) を持ちます。そのため、クロスサイト固有の課題は存在しません(カバーされません)が、仮に各サーバが別のドメインに存在しても基本的には動作するはずです。
oAuth2/OIDC(OpenID Connect)の利用シーンは多種多様です。
本例は、認証・認可サーバ,クライアントアプリケーション,リソースサーバの全てがIRISで実行されるクローズドな環境(社内や組織内での使用)を想定して、認可コードフロー(Authorization Code Flow)を実現します。分かりやすい解説が、ネットにたくさんありますので、コードフロー自身の説明は本稿では行いません。
認証・認可サーバの候補はIRIS, WindowsAD, Azure AD, AWS Cognito, Google Workspace, keycloak, OpenAMなどがあり得ます。個別に動作検証が必要です。
クライアントアプリケーション(RP)は、昨今はSPAが第一候補となると思いますが、利用環境によっては、SPA固有のセキュリティ課題に直面します。
IRISには、Confidential Clientである、従来型のWebアプリケーション(フォームをSubmitして、画面を都度再描画するタイプのWebアプリケーション)用のoAuth2関連のAPI群が用意されています。
そこで、Webアプリケーション(CSP)を選択することも考えられますが、クライアント編では、よりセキュアとされるSPA+BFF(Backend For Frontend)の構成を実現するにあたり、Webアプリケーション用APIをそのまま活用する方法をご紹介する予定です。
以下、サーバ編の動作確認には、CSPアプリケーションを使用しています。これは、新規開発にCSP(サーバページ)を使用しましょう、という事ではなく、BFF実現のために必要となる機能を理解するためです。BFFについては、クライアント編で触れます。BFFについては、こちらの説明がわかりやすかったです。
リソースサーバの役割はデータプラットフォームであるIRISは最適な選択肢です。医療系用のサーバ機能ですがFHIRリポジトリはその良い例です。本例では、至極簡単な情報を返すAPIを使用しています。
少しの努力でFHIRリポジトリを組み込むことも可能です。
サーバ編とクライアント編に分けて記載します。今回はサーバ編です。
とはいえ、クライアントとサーバが協調動作する仕組みですので、境界は少しあいまいです