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· 2020年9月11日 8m read

IRIS for Health 上でFHIR リポジトリ+OAuth2 認可サーバ/リソースサーバ構成を構築する パート2

 

開発者の皆さん、こんにちは。

今回の記事では前回の記事に引き続き、IRIS for Health上で、FHIRリポジトリ+OAuth2認可サーバ/リソースサーバを構成する方法をご案内します。

(注意:2020.4以降のバージョンではこの記事に記載されているスコープ指定では正しくリソースが取得できません。詳細はこちらの記事をご覧ください。)

パート1では、事前準備と、OAuth2認可サーバを構成し、アクセストークンを取得するとこまでをご紹介しました。
このパート2では、FHIRリポジトリの構築方法と、OAuth2クライアント/リソースサーバの構成方法をご紹介していきます。

今日構成する、FHIRリポジトリおよび、OAuth2クライアント/リソースサーバの構成は、前回パート1で構成したOAuth2認可サーバのIRISインスタンスと分けることもできますし、同じインスタンスに同居させることもできます。
この記事の中では前回と同じインスタンス上に構成していきます。

FHIRリポジトリの構築とOAuth Client Nameの指定

FHIRリポジトリの構築方法は、過去の記事「Azure上でIRIS for Healthをデプロイし、FHIR リポジトリを構築する方法」で紹介しています。

管理ポータルにアクセスし、ネームスペース/データベースを作成、さらにHealthメニューからFHIRリポジトリを構築する手順はこの記事を参考にして進めてください。
この記事の中でもネームスペース/データベース=FHIRSERVER , FHIR endpointを/csp/healthshare/fhirserver/fhir/r4として構成しています。

構築後の以下の画面で、endpoint URL /csp/healthshare/fhirserver/fhir/r4 をクリックして構成画面を開きます。

構成画面で OAuth Client Name を欄に、これから作成するOAuth2クライアントの構成名を入力しておきます。
先にOAuth2クライアントを構成している場合はその名前に合わせてください。

ここでは、「FHIRResource」という文字列にしておきます。変更するには上記画面で「Edit」ボタンを押して変更し、「Update」ボタンで保存します。


 

OAuth2クライアントの構成

次は、OAuth2クライアント構成を作成していきましょう。

管理ポータルのシステム管理→セキュリティ→OAuth2.0 と進み、前回パート1とは異なり、「サーバ」ではなく、「クライアント」を選択します。

次の画面では「サーバの説明を作成」をクリックして、OAuth2認可サーバへ接続するための構成を作成します。

 

サーバデスクリプション ページで発行者エンドポイントには、パート1で構成した認可サーバのエンドポイントを入力します。

以下はパート1で構成したOAuth2認可サーバの構成画面です。

 

SSL/TLS構成には、パート1の事前準備で作成した、SSL/TLS構成「SSL4CLIENT]を入力します。

項目を入力したら「発見して保存」を実行して、OAuth2認可サーバから情報を取得します!

 

アクセスに成功すると以下のように取得できた情報が表示されます。
パート1事前準備で用意したホスト名を指定したSSL証明書が正しく作成・認識されていない場合、この過程でエラーが発生することがありますので、ご注意ください。

注意:この連載のパート1でDLしたdocker-containerファイルを使っている場合でも、IRISコンテナ→Apacheコンテナへホスト名を指定したアクセスがうまくいかない場合があります。この場合、以下のようにextra_hostsとして、docker-compose.ymlファイルに自分のマシンのホスト名とIPアドレスを入力すると解決できることがあります。

    extra_hosts:
       - <yourhostname>:<your ip address>

 

「保存」を押して構成を保存すると、以下のページに戻りますので、続いて「クライアント構成」を選択してFHIRリポジトリ用の構成を作成していきます。

 

OAuth2クライアントにクライアント構成を追加する

ややこしいタイトルですが、次は今作成したOAuth2クライアント設定(どのOAuth2認証サーバに接続するかという情報をもつ)に、クライアント構成(OAuth2クライアントとしてOAuth2認可サーバに接続したい、具体的なFHIRリポジトリやCSPアプリケーションなどの情報)を追加します。

次の画面では「クライアントの構成を作成」をクリックして以下の画面を表示し、必要な項目を設定していきます。

最初に、クライアントの種別=リソース・サーバ を選択すると、下記入力画面と同じになります。

アプリケーション名 FHIRResource : FHIRリポジトリの構成で「OAuth Client Name」に入力した値を入力します。
クライアント名

OAuth2認可サーバに登録されるクライアント名です。アプリケーション名と同じでもかまいませんが、ここでは違う名前にしました。

説明 この構成の説明を入力します。
クライアントの種別 「リソース・サーバ」を選択します。
SSL/TLS構成 パート1事前準備で用意したSSL/TLS構成を指定します。

 

入力が完了したら、「動的登録と保存」ボタンをクリックして保存とサーバへの登録を行います。
(ちょっとわかりにくいですが)ボタンの表示が「動的登録と保存」から「更新メタデータを取得して保存」に変わったら登録が成功しています。

OAuth2認可サーバ側の構成情報を見て、本当に登録されているか確認してみましょう。

管理ポータル→システム管理→セキュリティ管理→OAuth2.0→サーバ の画面で「クライアントデスクリプション」をクリックすると以下のように登録されていることがわかります。

名前がクライアント名で指定した名前になっていることが確認できます。

パート1ではPostmanからアクセステストする際は、このクライアントデスクリプション画面をさらに進んで表示される、クライアント認証情報(クライアントIDとくらい案tの秘密鍵)を手動でコピーしましたが、今回は動的登録の過程でこれらの情報はクライアント側に受け渡されています。

PostmanからOAuth2アクセストークンを使って、FHIRリポジトリへアクセスする

それではいよいよ、Postmanからアクセスしてみましょう!

まずアクセストークンを取得します。基本はパート1の最後で取得した方法と同じですが、アクセストークンの発行先を表すaudienceパラメータを追加する必要があります。

aud=https://<hostname>/csp/healthshare/fhirserver/fhir/r4

Postmanで具体的に追加するには、以下のようにAuthorization Codeのendpoint URLにパラメータとして追加します。
(Postmanの画面の都合上パラメータの全体が見えませんが、上記の aud=https://<hostname>/csp/healthshare/fhirserver/fhir/r4 をすべて記載してください)

注意:Postmanに入力するClient IDやClient Secretは先ほどのリソースサーバの動的登録で発行されたものに変更する必要はありません。パート1で追加した postman用に発行されたクライアントIDと秘密鍵を使用します。

アクセストークンが取得できたら、その内容をコピーしておいてください。

PostmanではこのままAuthorizationのTYPEをOAuth2にしておくと、アクセストークンを送信する機能がありますが、IRIS for HealthのFHIRリポジトリでは、OAuth2のアクセストークンだけではなく、Basic認証のユーザ・パスワード情報も送信する必要があります。

そのため、Postmanからアクセスする場合は、(ちょっと手間ですが)AuthorizationのTYPEはBasic Authにして、ユーザ名パスワードを入力し、アクセストークンはFHIRリポジトリへのRESTリクエストのParameterとして送信する必要があります。

具体的には、まず以下の画面のようにユーザ名・パスワードを入力します。このユーザ情報は、アクセストークンのsub内に含まれるユーザ情報と一致しているかの確認が行われるため、必ずアクセストークン取得時に入力したユーザ情報と同じユーザである必要があります。

 

 

次に、Paramsタブで、 access_token にパラメータに先ほどのアクセストークン値を入力します。

 

 

FHIRリポジトリを構築したばかりであれば、リポジトリには何のデータもはいってはいませんが、Patientデータをリクエストしてみましょう!

Request URL には https://<hostname>/csp/healthshare/fhirserver/fhir/r4/Patient を入力し、HTTPのメソッドはGETを選択します(上の図のようになります)

Sendボタンを押してリクエストを投げてみましょう!以下のようにFHIRのBundleが取得できれば、アクセストークンを使用したFHIRリポジトリへのアクセスは成功です!

 

FHIRリポジトリへのデータの登録や検索の方法については、IRIS for Healthのドキュメントやコミュニティの記事をご参照ください。

IRIS for Health 2020.1 日本語ドキュメント:リソースリポジトリ

IRIS for Health 2020.3  英語ドキュメント:Resource Repository

(この記事を執筆した段階では、2020.3はPreview Editionです。)

 

いかがでしたか?FHIRリポジトリへのアクセスが成功したでしょうか?

この連載で紹介した構成内容は最も単純な構成ですが、実際のFHIRプロジェクトではユーザの認めたスコープによってどの範囲のデータまで返すように実装するか?といった検討と実装が必要になってきます。

開発者コミュニティでは引き続きFHIRに関する情報を発信していきたいと思います。

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「発見して保存」を押した後、下記エラーが表示されます。

自己署名証明書を使用しているせいかと思いましたが、何か原因がございますでしょうか?

※ブラウザで管理ポータルに繋ぐ際、自己署名証明書の警告は表示されます。

お試しいただきありがとうございます。

IRIS for Health のコンテナから、ホストに対してホスト名でアクセスできていない可能性があります。以下のコマンド試してみてください。

#docker exec -it irishealth bash
irisowner@iris:~$ ping <yourhostname>
ping: <yourhostname>: Name or service not known

このメッセージが出る場合、記事内にある  extra_hosts:  の追加を試してみてください。
(この注意を書く位置がよくなったです。。。お手数かけて申し訳ありません。)

エラーが出た時点でストップしてしまい、少し下の注釈を見落としておりました。申し訳ございません。

記載頂いたpingは通る状態だったのですが、extra_hostsの設定は行っていなかったため設定したところ無事動作しました。
ただ以下のようにlocalhostではNGで、実際のIPアドレスを指定しないとエラーが解消しませんでしたので念のため共有させて頂ければと思います。

NG

iris:
  image: store/intersystems/irishealth-community:2020.3.0.200.0
  init: true
  container_name: irishealth
  ports:
     - "52773:52773"
     - "1972:1972"
  environment:
    - ISC_DATA_DIRECTORY=/ISC/dur
    - TZ=JST-9
  volumes:
    - .:/ISC
  extra_hosts:
     - my-ubuntu:172.0.0.1

OK

iris:
  image: store/intersystems/irishealth-community:2020.3.0.200.0
  init: true
  container_name: irishealth
  ports:
     - "52773:52773"
     - "1972:1972"
  environment:
    - ISC_DATA_DIRECTORY=/ISC/dur
    - TZ=JST-9
  volumes:
    - .:/ISC
  extra_hosts:
     - my-ubuntu:192.168.0.123