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· 2020年8月17日 25m read

VM Backups and Caché freeze/thaw scripts

この記事では、スナップショットを使用したソリューションとの統合の例を使って、外部バックアップによる Caché のバックアップ方法を紹介します。 このところ私が目にするソリューションの大半は、Linux の VMware にデプロイされているため、この記事の大半では、例として、ソリューションが VMware スナップショットテクノロジーをどのように統合しているかを説明しています。

Caché バックアップ - すぐ使えますか?

Caché をインストールすると、Caché データベースを中断せずにバックアップできる Caché オンラインバックアップが含まれています。 しかし、システムがスケールアップするにつれ、より効率的なバックアップソリューションを検討する必要があります。 Caché データベースを含み、システムをバックアップするには、スナップショットテクノロジーに統合された外部バックアップをお勧めします。

外部バックアップに関して特別な考慮事項はありますか?

詳しい内容は外部バックアップのオンラインドキュメンテーションに説明されていますが、 主な考慮事項は次のとおりです。

「スナップショットの整合性を確保するために、スナップショットが作成される間、Caché はデータベースへの書き込みをfreezeする方法を提供しています。 スナップショットの作成中は、データベースファイルへの物理的な書き込みのみがfreezeされるため、ユーザーは中断されることなくメモリ内で更新を実行し続けることができます。」

また、仮想化されたシステム上でのスナップショットプロセスの一部によって、バックアップされている VM にスタンタイムと呼ばれる短い無応答状態が発生することにも注意してください。 通常は 1 秒未満であるため、ユーザーが気付いたり、システムの動作に影響を与えたりすることはありませんが、状況によってはこの無応答状態が長引くことがあります。 無応答状態が Caché データベースミラーリングの QoS タイムアウトより長引く場合、バックアップノードはプライマリに障害が発生したとみなし、フェイルオーバーします。 この記事の後の方で、ミラーリング QoS タイムアウトを変更する必要がある場合に、スタンタイムをどのように確認できるかについて説明します。


InterSystems データプラットフォームとパフォーマンスに関する他の連載記事のリストはこちらにあります。

この記事では、Caché オンラインドキュメンテーション『Backup and Restore Guide(バックアップと復元ガイド)』も確認する必要があります。


バックアップの選択肢

最小限のバックアップソリューション - Caché Online Backup

ほかのソリューションがない場合は、ダウンタイム無しでバックアップを行えるこのソリューションが InterSystems データプラットフォームに同梱されています。 Caché オンラインバックアップは、Caché データベースファイルのみをバックアップするもので、データに割り当てられたデータベースのすべてのブロックをキャプチャし、出力をシーケンシャルファイルに書き込みます。 Caché Online Backup は累積バックアップと増分バックアップをサポートしています。

VMware の文脈では、Caché Online Backup はゲスト内で発生するバックアップソリューションです。 ほかのゲスト内ソリューションと同様に、Caché Online Backup の動作は、アプリケーションが仮想化されていようが、ホストで直接実行していようが、基本的に変わりません。 Caché Online Backup は、システムバックアップと連携しながら Caché のオンラインバックアップ出力ファイルを、アプリケーションが使用しているその他すべてのファイルシステムとともに、バックアップメディアにコピーします。 最小限のシステムバックアップには、インストールディレクトリ、ジャーナルおよび代替ジャーナルディレクトリ、アプリケーションファイル、およびアプリケーションが使用する外部ファイルを含むすべてのディレクトリを含める必要があります。

Caché Online Backup は、Caché データベースやアドホックバックアップのみをバックアップする低コストのソリューションを実装したいと考えている小規模サイト向けのエントリレベルのアプローチとして捉えてください。ミラーリングをセットアップする際のバックアップなどに役立てられます。 しかし、データベースのサイズが増加したり、Caché が顧客のデータランドスケープの一部でしかない場合は、外部バックアップにスナップショットテクノロジーとサードパーティ製ユーティリティを合わせたソリューションがベストプラクティスとして推奨されます。非データベースファイルのバックアップ、より高速な復旧時間、エンタープライズ全体のデータビュー、より優れたカタログと管理用ツールなど、さまざまなメリットが得られます。


推奨されるバックアップソリューション - 外部バックアップ

VMware を例として使用します。VMware で仮想化すると、VM 全体を保護するための追加機能と選択肢が追加されます。 ソリューションの仮想化が完了した時点で、オペレーティングシステム、アプリケーション、データを含むシステムを .vmdk(とその他の)ファイル内に効果的にカプセル化したことになります。 これらのファイルの管理は非常に簡単で、必要となった場合にはシステム全体の復旧に使用できるため、オペレーティングシステム、ドライバ、サードパーティ製アプリケーション、データベースとデータベースファイルなどのコンポーネントを個別に復旧して構成する必要のある物理システムで同じような状況が発生した場合とは大きく異なります。


VMware のスナップショット

VMware の vSphere Data Protection(VDP)や、Veeam や Commvault などのサードパーティ製バックアップソリューションでは、VMware 仮想マシンスナップショットを使用してバックアップを作成しています。 VMware スナップショットの概要を説明しますが、詳細については、VMware ドキュメンテーションを参照してください。

スナップショットは VM 全体に適用されるものであり、オペレーティングシステムとすべてのアプリケーションまたはデータベースエンジンはスナップショットが発生していることを認識しないということに注意してください。 また、次のことにも注意してください。

VMware スナップショット自体はバックアップではありません!

スナップショットは、バックアップソフトウェアによるバックアップの作成を可能にしますが、スナップショット自体はバックアップではありません。

VDP とサードパーティ製バックアップソリューションは、バックアップアプリケーションとともに VMware スナップショットプロセスを使用して、スナップショットの作成と、非常に重要となるその削除を管理します。 おおまかに見ると、VMware スナップショットを使用した外部バックアップのイベントのプロセスと順序は次のとおりです。

  • サードパーティ製バックアップソフトウェアは ESXi ホストに対し、VMware スナップショットをトリガーするように要求します。
  • VM の .vmdk ファイルは読み取り専用状態となり、各 VM の .vmdk ファイルに子 vmdk 差分ファイルが作成されます。
  • 書き込み時コピーを使用して、VM へのすべての変更が差分ファイルに書き込まれます。 すべての読み取りは、最初に差分ファイルから行われます。
  • バックアップソフトウェアは、読み取り専用の親 .vmdk ファイルからバックアップターゲットへのコピーを管理します。
  • バックアップが完了すると、スナップショットがコミットされます(VM ディスクは、親に書き込まれた差分ファイルのブロックの書き込みと更新を再開します)。
  • VMware スナップショットが削除されます。

バックアップソリューションは、変更ブロック追跡(CBT)などのほかの機能も使用し、増分または累積バックアップを可能にして速度と効率性(容量節約において特に重要)を実現します。また、一般的に、データの重複解除や圧縮、スケジューリング、整合性チェックなどで IP アドレスが更新された VM のマウント、VM とファイルレベルの完全復元、およびカタログ管理などの重要な機能性も追加します。

適切に管理されていない、または長期間実行されたままの VMware スナップショットは、ストレージを過剰に消費し(データの変更量が増えるにつれ、差分ファイルが増加し続けるため)、VM の速度を低下させてしまう可能性があります。

本番インスタンスで手動スナップショットを実行する前に、十分に検討する必要があります。 なぜ実行しようとしているのか、 スナップショットが作成された時間に戻すとどうなるか、 作成とロールバック間のすべてのアプリケーショントランザクションはどうなるか、といったことを検討してください。

バックアップソフトウェアがスナップショットを作成し、削除しても問題ありません。 スナップショットの存続期間は、短期間であるものなのです。 また、バックアップ戦略においては、ユーザーやパフォーマンスへの影響をさらに最小限に抑えられるように、システムの使用率が低い時間を選ぶことも重要です。

スナップショットに関する Caché データベースの考慮事項

スナップショットを作成する前に、保留中のすべての書き込みがコミットされ、データベースが一貫した状態になるように データベースを静止させる必要があります。 Caché は、スナップショットが作成される間、データベースへの書き込みをコミットして短時間フリーズ(停止)するメソッドと API を提供しています。 こうすることで、スナップショットの作成中は、データベースファイルへの物理的な書き込みのみがフリーズされるため、ユーザーは中断されることなくメモリ内で更新を実行し続けることができます。 スナップショットがトリガーされると、データベースの書き込みが再開し、バックアップはバックアップメディアへのデータのコピーを続行します。 フリーズからの復旧は、非常に短時間(数秒)で発生します。

書き込みを一時停止するのに加え、Caché Freeze は、ジャーナルファイルの切り替えとジャーナルへのバックアップマーカーの書き込みも処理します。 ジャーナルファイルは、物理データベースの書き込みがフリーズしている間、通常通りに書き込みを続けます。 物理データベースの書き込みがフリーズしている間にシステムがクラッシュした場合、データは、起動時に、通常通りジャーナルから復元されます。

以下の図は、整合性のあるデータベースイメージを使用してバックアップを作成するための、VMware スナップショットを使用した Freeze と Thaw の手順を示しています。



Freeze から Thaw の時間が短いところに注目してください。読み取り専用の親をバックアップターゲットにコピーする時間でなく、スナップショットを作成する時間のみです。


Caché の Freeze と Thaw の統合

vSphere では、スナップショット作成のいずれか側で自動的にスクリプトを呼び出すことができ、この時に、Caché Freeze と Thaw が呼び出されます。 注意: この機能が正しく機能するために、ESXi ホストは VMware ツールを介してゲストオペレーティングシステムにディスクを静止するように要求します。

VMware ツールは、ゲストオペレーティングシステムにインストールされている必要があります。

スクリプトは、厳密な命名規則と場所のルールに準じる必要があります。 ファイルの権限も設定されていなければなりません。 以下は、Linux の VMware の場合のスクリプト名です。

# /usr/sbin/pre-freeze-script
# /usr/sbin/post-thaw-script

以下は、InterSystems のチームが内部テストラボインスタンスに対して、Veeam バックアップで使用する Freeze と Thaw のスクリプト例ですが、ほかのソリューションでも動作するはずです。 これらの例は、vSphere 6 と Red Hat 7 で検証され、使用されています。

これらのスクリプトは例として使用でき、方法を示すものではありますが、各自の環境で必ず検証してください!

Freeze 前スクリプトの例:

#!/bin/sh
#
# Script called by VMWare immediately prior to snapshot for backup.
# Tested on Red Hat 7.2
#

LOGDIR=/var/log
SNAPLOG=$LOGDIR/snapshot.log

echo >> $SNAPLOG
echo "`date`: Pre freeze script started" >> $SNAPLOG
exit_code=0

# Only for running instances
for INST in `ccontrol qall 2>/dev/null | tail -n +3 | grep '^up' | cut -c5-  | awk '{print $1}'`; do

    echo "`date`: Attempting to freeze $INST" >> $SNAPLOG

    # Detailed instances specific log    
    LOGFILE=$LOGDIR/$INST-pre_post.log

    # Freeze
    csession $INST -U '%SYS' "##Class(Backup.General).ExternalFreeze(\"$LOGFILE\",,,,,,1800)" >> $SNAPLOG $
    status=$?

    case $status in
        5) echo "`date`:   $INST IS FROZEN" >> $SNAPLOG
           ;;
        3) echo "`date`:   $INST FREEZE FAILED" >> $SNAPLOG
           logger -p user.err "freeze of $INST failed"
           exit_code=1
           ;;
        *) echo "`date`:   ERROR: Unknown status code: $status" >> $SNAPLOG
           logger -p user.err "ERROR when freezing $INST"
           exit_code=1
           ;;
    esac
    echo "`date`:   Completed freeze of $INST" >> $SNAPLOG
done

echo "`date`: Pre freeze script finished" >> $SNAPLOG
exit $exit_code

Thaw スクリプトの例:

#!/bin/sh
#
# Script called by VMWare immediately after backup snapshot has been created
# Tested on Red Hat 7.2
#

LOGDIR=/var/log
SNAPLOG=$LOGDIR/snapshot.log

echo >> $SNAPLOG
echo "`date`: Post thaw script started" >> $SNAPLOG
exit_code=0

if [ -d "$LOGDIR" ]; then

    # Only for running instances    
    for INST in `ccontrol qall 2>/dev/null | tail -n +3 | grep '^up' | cut -c5-  | awk '{print $1}'`; do

        echo "`date`: Attempting to thaw $INST" >> $SNAPLOG

        # Detailed instances specific log
        LOGFILE=$LOGDIR/$INST-pre_post.log

        # Thaw
        csession $INST -U%SYS "##Class(Backup.General).ExternalThaw(\"$LOGFILE\")" >> $SNAPLOG 2>&1
        status=$?

        case $status in
            5) echo "`date`:   $INST IS THAWED" >> $SNAPLOG
               csession $INST -U%SYS "##Class(Backup.General).ExternalSetHistory(\"$LOGFILE\")" >> $SNAPLOG$
               ;;
            3) echo "`date`:   $INST THAW FAILED" >> $SNAPLOG
               logger -p user.err "thaw of $INST failed"
               exit_code=1
               ;;
            *) echo "`date`:   ERROR: Unknown status code: $status" >> $SNAPLOG
               logger -p user.err "ERROR when thawing $INST"
               exit_code=1
               ;;
        esac
        echo "`date`:   Completed thaw of $INST" >> $SNAPLOG
    done
fi

echo "`date`: Post thaw script finished" >> $SNAPLOG
exit $exit_code

権限の設定を必ず行ってください:

# sudo chown root.root /usr/sbin/pre-freeze-script /usr/sbin/post-thaw-script
# sudo chmod 0700 /usr/sbin/pre-freeze-script /usr/sbin/post-thaw-script

Freeze と Thaw のテスト

スクリプトが正しく動作することをテストするには、VM でスナップショットを手動で実行し、スクリプトの出力を確認することができます。 以下のスクリーンショットは、[Take VM Snapshot(VM スナップショットの作成)]ダイアログとオプションを示します。

選択解除- [Snapshot the virtual machine's memory(仮想マシンのメモリをスナップショットする)]

選択 - [Quiesce guest file system (Needs VMware Tools installed)(ゲストファイルシステムを静止する: VMware ツールのインストールが必要)]チェックボックス。スナップショットを作成する際にゲストオペレーティングシステムで実行中のプロセスを一時停止し、ファイルシステムのコンテンツが既知の整合性のある状態を保つようにします。

重要! テストの後、スナップショットを必ず削除してください!!!!

スナップショットが作成される際に、静止フラグが真であり、仮想マシンがオンである場合、VMware ツールによって仮想マシンのファイルシステムが静止されます。 ファイルシステムの静止は、ディスク上のデータをバックアップに適した状態にするプロセスです。 このプロセスには、オペレーティングシステムのメモリ内キャッシュからディスクへのダーティバッファのフラッシュといった操作が含まれる場合があります。

以下の出力は、操作の一環としてスナップショットを含むバックアップを実行した後に、上記の Freeze/Thaw スクリプトの例で設定された $SNAPSHOT ログファイルのコンテンツを示しています。

Wed Jan  4 16:30:35 EST 2017: Pre freeze script started
Wed Jan  4 16:30:35 EST 2017: Attempting to freeze H20152
Wed Jan  4 16:30:36 EST 2017:   H20152 IS FROZEN
Wed Jan  4 16:30:36 EST 2017:   Completed freeze of H20152
Wed Jan  4 16:30:36 EST 2017: Pre freeze script finished

Wed Jan  4 16:30:41 EST 2017: Post thaw script started
Wed Jan  4 16:30:41 EST 2017: Attempting to thaw H20152
Wed Jan  4 16:30:42 EST 2017:   H20152 IS THAWED
Wed Jan  4 16:30:42 EST 2017:   Completed thaw of H20152
Wed Jan  4 16:30:42 EST 2017: Post thaw script finished

この例では、Freeze から Thaw までに 6 秒経過していることがわかります(16:30:36~16:30:42)。 この間、ユーザー操作は中断されていません。 独自のシステムからメトリックを収集する必要がありますが、背景としては、この例は、IO ボトルネックがなく、平均 200 万 Glorefs/秒、17 万 Gloupds/秒、および毎秒あたり平均 1,100 個の物理読み取りと書き込みデーモン 1 サイクル当たりの書き込み 3,000 個の BM でアプリケーションベンチマークを実行しているシステムから得たものです。

メモリはスナップショットの一部ではないため、再起動すると、VM は再起動して復元されることに注意してください。 データベースファイルは整合性のある状態です。 バックアップを「再開」するのではなく、ファイルを既知の時点の状態にする必要があります。 その後で、ファイルが復元されたら、ジャーナルと、アプリケーションとトランザクションの整合性に必要なその他の復元手順をロールフォワードできます。

その他のデータ保護を追加するには、ジャーナルの切り替えを単独で実行することもでき、ジャーナルは、たとえば 1 時間ごとに別の場所にバックアップまたは複製されます。

以下は、上記の Freeze と Thaw スクリプトの $LOGFILE の出力で、スナップショットのジャーナルの詳細を示しています。

01/04/2017 16:30:35: Backup.General.ExternalFreeze: Suspending system

Journal file switched to:
/trak/jnl/jrnpri/h20152/H20152_20170104.011
01/04/2017 16:30:35: Backup.General.ExternalFreeze: Start a journal restore for this backup with journal file: /trak/jnl/jrnpri/h20152/H20152_20170104.011

Journal marker set at
offset 197192 of /trak/jnl/jrnpri/h20152/H20152_20170104.011
01/04/2017 16:30:36: Backup.General.ExternalFreeze: System suspended
01/04/2017 16:30:41: Backup.General.ExternalThaw: Resuming system
01/04/2017 16:30:42: Backup.General.ExternalThaw: System resumed

VM スタンタイム

VM スナップショットの作成時、バックアップが完了してスナップショットがコミットされた後、VM を短時間フリーズする必要があります。 この短時間のフリーズは、VM のスタンと呼ばれることがよくあります。 スタンタイムについてよく説明されたブログ記事は、こちらをご覧ください。 以下に要約した内容を示し、Caché データベースの考慮事項に照らして説明します。

スタンタイムに関する記事より: 「VM スナップショットを作成するには、(i)デバイスの状態をディスクにシリアル化し、(ii)現在実行中のディスクを閉じてスナップショットポイントを作成するために、VM は「スタン」されます(無応答状態になります)。… 統合時、VM は、ディスクを閉じて統合に最適な状態にするために、「スタン」されます。」

スタンタイムは、通常数百ミリ秒です。ただし、コミットフェーズ中にディスクの書き込みアクティビティが非常に高い場合には、スタンタイムが数秒に長引くことがあります。

VM が、Caché データベースミラーリングに参加するプライマリまたはバックアップメンバーであり、スタンタイムがミラーのサービス品質(QoS)タイムアウトより長引く場合、ミラーはプライマリ VM に失敗としてレポートし、ミラーのテイクオーバーを開始します。

2018 年 3 月更新: 同僚の Pter Greskoff から指摘されました。バックアップミラーメンバーは、VM スタン中またはプライマリミラーメンバーが利用不可である場合には、QoS タイムアウトの半分超という短時間でフェイルオーバーを開始することがあります。

QoS の考慮事項とフェイルオーバーのシナリオの詳細については、「Quality of Service Timeout Guide for Mirroring(ミラーリングのサービス品質タイムアウトに関するガイド)」という素晴らしい記事を参照できますが、以下に、VM スタンタイムと QoS に関する要約を示します。

バックアップミラーが、QoS タイムアウトの半分の時間内にプライマリミラーからメッセージを受信しない場合、ミラーはプライマリが動作しているかどうかを確認するメッセージを送信します。 それからバックアップはさらに QoS タイムアウトの半分の時間、プライマリマシンからの応答を待機します。 プライマリからの応答がない場合、プライマリは停止しているとみなされ、バックアップがテイクオーバーします。

ビジー状態のシステムでは、プライマリからバックアップミラーにジャーナルが継続的に送信されるため、バックアップはプライマリが動作しているかどうかを確認する必要はありません。 ただし、バックアップが発生している可能性が高い静止時間中、アプリケーションがアイドル状態である場合、QoS タイムアウトの半分以上の時間、プライマリとバックアップミラーの間でメッセージのやり取りがない可能性があります。

これは Peter が提示した例ですが、このタイムフレームを、QoS タイムアウトが :08 秒で VM スタンタイムが :07 秒のアイドル状態にあるシステムで考えてみましょう。

  • :00 プライマリは キープライブでアービターに ping し、アービターは即座に応答
  • :01 バックアップメンバーはプライマリにキープアライブを送信し、プライマリは即座に応答
  • :02
  • :03 VM スタンの開始
  • :04 プライマリはアービターにキープアライブを送信しようとするが、スタンが完了するまで到達しない
  • :05 QoS の半分の時間が経過したため、バックアップメンバーはプライマリに ping を送信
  • :06
  • :07
  • :08 QoS タイムアウトが過ぎてもアービターはプライマリからの応答を受信しないため、接続を閉じる
  • :09 バックアップはプライマリからの応答を受信していないため、接続が失われたことをアービターに確認し、テイクオーバーを開始
  • :10 VM スタンが終了するが、間に合わない!!

上記のリンク先の記事にある「Pitfalls and Concerns when Configuring your Quality of Service Timeout(サービス品質タイムアウトを構成する際の落とし穴と考慮事項)」のセクションもお読みください。QoS を必要な期間だけ確保する際のバランスが説明されています。 QoS が長すぎる場合、特に 30 秒を超える場合も問題を引き起こす可能性があります。

2018 年 3 月更新の終了:

ミラーリングの QoS の詳細については、ドキュメンテーションを参照してください。

スタンタイムを最小限に抑える戦略には、データベースアクティビティが低い場合にバックアップを実行することと、ストレージを十分にセットアップすることが挙げられます。

上記で述べたように、スナップショットの作成時に指定できるオプションがいくつかあります。その 1 つは、スナップショットにメモリ状態を含めることです。Caché データベースのバックアップにはメモリ状態は不要であることに注意してください。 メモリフラグが設定されている場合、仮想マシンの内部状態のダンプがスナップショットに含められます。 メモリスナップショットの作成には、もっと長い時間がかかります。 メモリスナップショットは、実行中の仮想マシンの状態を、スナップショットが作成された時の状態に戻すために使用されます。 これは、データベースファイルのバックアップには必要ありません。

メモリスナップショットを作成する場合、仮想マシンの状態全体が停止しますが、スタンタイムはさまざまです。

前述のとおり、バックアップでは、整合性のある使用可能なバックアップを保証するために、手動スナップショットで、またはバックアップソフトウェアによって、静止フラグを true に設定する必要があります。

VMware ログでスタンタイムを確認

ESXi 5.0 より、スナップショットのスタンタイムは、以下のようなメッセージで仮想マシンのログファイル(vmware.log)に記録されます。

2017-01-04T22:15:58.846Z| vcpu-0| I125: Checkpoint_Unstun: vm stopped for 38123 us

スタンタイムはミリ秒単位であるため、上記の例にある 38123 us は 38123/1,000,000 秒または 0.038 秒となります。

スタンタイムが許容範囲内であることを確認するため、またはスタンタイムが長引くせいで問題が発生していると思われる場合にトラブルシューティングを実施するため、関心のある VM のフォルダから vmware.log ファイルをダウンロードして確認することができます。 ダウンロードしたら、以下の Linux コマンドの例を使うなどして、ログを抽出しソートできます。

vmware.log ファイルのダウンロード例

vSphere 管理コンソールまたは ESXi ホストコマンドラインから VMware サポートバンドルを作成するなど、サポートログのダウンロードにはいくつかの方法があります。 全詳細については VMware ドキュメンテーションを参照できますが、以下は、スタンタイムを確認できるように、vmware.log ファイルを含む非常に小さなサポートバンドルを作成して収集する簡単な方法です。

VM ファイルが配置されているディレクトリの正式な名称が必要となります。 ssh を使用してデータベース VM が実行している ESXi ホストにログオンし、コマンド vim-cmd vmsvc/getallvms を使用して vmx ファイルとそれに関連付けられた一意の正式名称を一覧表示します。

たとえば、この記事で使用されているデータベース VM の正式な名称は次のように出力されます。 26 vsan-tc2016-db1 [vsanDatastore] e2fe4e58-dbd1-5e79-e3e2-246e9613a6f0/vsan-tc2016-db1.vmx rhel7_64Guest vmx-11

次に、ログファイルのみを収集してバンドルするコマンドを実行します。
vm-support -a VirtualMachines:logs

コマンドによって、以下の例のように、サポートバンドルの場所が表示されます。 To see the files collected, check '/vmfs/volumes/datastore1 (3)/esx-esxvsan4.iscinternal.com-2016-12-30--07.19-9235879.tgz'.

これで、sftp を使用してファイルをホストから転送し、さらに処理して確認できるようになりました。

この例では、サポートバンドルを解凍した後に、データベース VM の正式名称に対応するパスに移動します。 この場合は、 <bundle name>/vmfs/volumes/<host long name>/e2fe4e58-dbd1-5e79-e3e2-246e9613a6f0 というパスになります。

そこで番号付きの複数のログファイルが表示されます。最新のログファイルには番号は付きません。つまり、vmware.log と示されます。 ログはわずか数百 KB ですが、たくさんの情報が記載されています。ただし、注目するのは stun/unstun の時間のみで、grep を使うと簡単に見つけ出すことができます。 次は、その記載例です。

$ grep Unstun vmware.log
2017-01-04T21:30:19.662Z| vcpu-0| I125: Checkpoint_Unstun: vm stopped for 1091706 us
--- 
2017-01-04T22:15:58.846Z| vcpu-0| I125: Checkpoint_Unstun: vm stopped for 38123 us
2017-01-04T22:15:59.573Z| vcpu-0| I125: Checkpoint_Unstun: vm stopped for 298346 us
2017-01-04T22:16:03.672Z| vcpu-0| I125: Checkpoint_Unstun: vm stopped for 301099 us
2017-01-04T22:16:06.471Z| vcpu-0| I125: Checkpoint_Unstun: vm stopped for 341616 us
2017-01-04T22:16:24.813Z| vcpu-0| I125: Checkpoint_Unstun: vm stopped for 264392 us
2017-01-04T22:16:30.921Z| vcpu-0| I125: Checkpoint_Unstun: vm stopped for 221633 us

この例では、2つのグループのスタンタイムを確認できます。1 つはスナップショップ作成時、そしてもう 1 つは、各ディスクのスナップショットが削除/統合された 45 分後(バックアップソフトウェアが読み取り専用 vmx ファイルのコピーを完了したとき)のものです。 上記の例では、最初のスタンタイムは 1 秒をわずかに上回っていますが、ほとんどのスタンタイムは 1 秒未満であることがわかります。

短時間のスタンタイムは、エンドユーザーが気付くものではありませんが、 Caché データベースミラーリングなどのシステムプロセスは、インスタンスが「アライブ」であるかどうかを継続的に監視しています。 スタンタイムがミラーリング QoS タイムアウトを超える場合、ノードは接続不可能であり「停止」状態とみなされ、フェイルオーバーがトリガーされます。

ヒント: すべてのログを確認するか、トラブルシューティングを実行する場合には、grep コマンドが役立ちます。すべての vmware*.log ファイルに対して grep を使用し、異常値、またはスタンタイムが QoS タイムアウトに達しているインスタンスを探してください。 以下のコマンドは、出力をパイプ処理し、awk で書式設定しています。

grep Unstun vmware* | awk '{ printf ("%'"'"'d", $8)} {print " ---" $0}' | sort -nr


最後に

通常稼働時に定期的にシステムを監視し、スタンタイムと、ミラーリングなどの HA 向けの QoS タイムアウトへの影響を理解しておく必要があります。 前述のとおり、スタンタイムまたはスタン解除タイムを最小限に抑える戦略には、データベースとストレージのアクティビティが低い場合にバックアップを実行することと、ストレージを十分にセットアップすることが挙げられます。 常時監視の場合、ログは、VMware ログのインサイトなどのツールを使用して処理できるかもしれません。

InterSystems データプラットフォームのバックアップと復元操作について、今後の記事で再度取り上げる予定です。 それまでは、システムのワークフローに基づいたコメントや提案がある場合は、以下のコメントセクションに投稿してください。

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